TRUST BUILDER’S BLOG

CATEGORY

2025.06.10日-
「スムーズな世代交代」は幻想だ

そろそろ、次世代にバトンを渡さなきゃいけないと思っている現社長。

いいかげん、バトンを渡してくれないかなと思っている後継者。

どちらも分かってはいるものの、何から手をつけていいか分からない。

現社長から見た後継者は、いつだって傲慢で甘ったれ。譲ってもらう立場なのに権利ばかり主張する。反対に後継者から見る現社長は、自分の成功体験に縛られて身動きできない頑固者。

これは、誰のせいでもないのです。次の世代にバトンを渡す時には必ず、ひずみが生じるものだから。

大切なものを渡すのに慎重になる現役世代と、はやく受け取って自分のものにしたい次世代との永遠の闘争。それが世代間ギャップ。

世代間ギャップを埋めるためには対話が必要。それを手伝うのが私の仕事だから、口酸っぱく言い続けます。
しかし、そう言いながらも私の頭の片隅には、そこはかとない諦観があります。

存在するギャップを無いものにはできない。
完全に埋めるのは不可能。

橋をかけたり、共通言語を持たせたり、通訳になったりするものの、限界はあります。

人が他者を完全に理解するのは不可能なように、現世代と次世代がパーフェクトに意気投合することはあり得ないのです。

だから「ある程度」の相互理解で充分です。

どのみち、そこから先は自分たちで創るしかないのだから。

世代交代に伴う苦しみはデフォルトなのです。
私が父から承継する時に、それを教えてくれる大人は周りにいなかったけれど、私は声を大にして言います。スムーズな世代交代なんてあり得ない、と。

次世代が前へ進むためには「どこまでの相互理解が必要か」を見極めること。

世代間の相互理解のために必要十分な努力をしたら、あとは自分たち世代のビジョンを達成するために邁進すればいい。ひたすらに。

ファシリテーターとして、私は『完璧な相互理解』ではなく、『前に進むための、共通の合意点』を探すお手伝いをします。
痛みを伴うプロセスを乗り越え、新しいビジョンを共に創り出していく。
それが、本当の意味での世代交代なのです。

  INDEX