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2025.07.10日-
「スムーズな世代交代」は幻想だ

世代交代はいつだって痛い。

どれだけ理解のある先代でも。

どれだけ成熟した後継者でも。

代替わりの期間は混乱する。

前の世代の成功体験は楔(くさび)になり、愛情は足かせになる。

次世代はいつだって傲慢で甘ったれ。譲ってもらう立場なのに権利ばかり主張する。

 

でもこれは、誰のせいでもない。

次の世代に主体を手渡す時には必ず、ひずみが生じるものだから。

大切なものを渡すのに慎重になる現役世代と、はやく受け取って自分のものにしたい次世代との永遠の闘争。

それが世代間ギャップ。

 

世代間ギャップを埋めるためには対話が必要。それを手伝うのが私の仕事だから、口酸っぱく言い続けている。

しかし、そう言いながらも頭の片隅にある何かしらの諦観を、私は密かに愛している。

 

そこにあるものを消すことはできない。

存在するギャップを無かったことにはできないし、完全に埋めるのは不可能。

それはマリアナ海溝を埋めてしまえという暴挙にも等しい。

 

橋をかけたり、共通言語なる翻訳機能を設けてみたりはするものの、限界はある。

人が完全に他者を理解するのは不可能なように、現世代と次世代がパーフェクトに意気投合する姿を思い描いてはいけない。

「ある程度」の相互理解で充分。どの程度まで必要なのかは各ファミリー、各同族企業によって違うけれど。

どのみち、そこから先は自分たちで創るしかないのだから。

世代間の相互理解にどれだけ時間を割いても、新しいものは創れない。それはビジョンではない。

 

スムーズな世代交代なんてあり得ない、とはどの本にも書いていない。

苦しみはデフォルトなのだと、あらかじめ教えてくれる大人はいない。

私は声を大にして言おう。

予定調和の世代交代なんてあり得ない。そんなものをいつまでも追い求めても無駄だ。

自社や、自分の家族が前へ進むためには「どこまでの理解が必要か」を見極めること。

見極めて、世代間の相互理解のために十分な努力をしたら、あとはビジョンを達成するために邁進すればいい。ひたすらに。

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