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人はときに、大きく心を痛める体験をする。
仕事上の失敗。信頼していた仲間の裏切り。お金の困窮。
親子や兄弟間のひどい確執。配偶者との訣別。
自分で選んだものもあれば、避けられなかった出来事もある。
生まれや育ちによる苦労も多い。
アイデンティティの喪失。
育てられなかった信頼関係。
心からの支えがゆらぐ体験。
卑近な例だが、私は80年続いた家業を継いですぐに譲渡し、望んでしたはずの結婚も2年で訣別した。自分で選んだ道だけど、大きく自分を損なったように思う。
こうした経験は、どれだけ長い時間をかけても完全に癒えることはない。
それでも人は、生きていくしかない。
生きるということを選んだ以上、歩みを進めるほかはない。
だから、こうした体験を持つ人生はすなわち、癒しながら生きる道になる。
自分自身を癒しながら、生きる。
忘れてはいけないのは、「回復の途中である」という意識。
完全に吹っ切れることはないのだ。
また、吹っ切る必要もない。
失ったものは確かにある。どれだけ求めても、与えられなかったものもある。
一生かかっても、癒されないこともある。
生きていくというのは、そういう自分と付き合っていくこと。
「同行二人」という言葉がある。
四国八十八ヶ所のお遍路がかぶる笠にかきつける語で、空海さんと常にともにあるという意味だ。自分自身を癒しながら生きていくというのは、同行自分(私の造語です)とでも言えようか。
自分が自分と一緒に歩む。歩いていく。
付き添っていく。寄り添って生きる。
そんな感覚で、癒される自分と、癒し手の自分が支えあって生きていくように思う。