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2020.07.24日-
話し続けることで、人は変わる

妹に、よく話を聞いてもらう。

このところ同じ問題で堂々巡りの、愚痴とも言えぬ話が続いていたので、「何回もこの話聞いてもらって、悪いねえ」とあやまると、彼女はこう言った。

「いいんだよ、さっちゃん。話し続けることで人は変わるから。話し続けてるうちに、自分の中から何かが出てくるから。こうやって話し続けないと、ダメなんだよ」

妹のその言葉に救われた。

同時に、自分の仕事現場を思い出した。

私は会議ファシリテーターである。

同席する経営会議やファミリー会議では、同じ話が何度も繰り返される。

ビジョンは?大事にする価値観は?あなた(方)は何がやりたいのか?

何度も何度も同じ問いを投げかける。

経営者や後継者の口から語られる言葉を、私は待っている。

すでに聞いたことのある内容でも、そのとき、その口から紡ぎ出されること自体が、重要なのだ。話し続けることで、言葉にならない混沌を壁に打ち続けることで、自分が求めていたものが見えてくる。

自分のなかにある「何か(生きる目的や、事業の意味や、眠っていた悲しみ)」が、湧き上がってくる。

その湧き上がってくる「何か」が、決断と行動の源泉になる。

次なるアクションを示し、新たな展開をつくるエナジーとなる。

何週間、何ヶ月、人によっては何年かかるか分からない。

けれど、求めて話し続けていれば、いつか必ず、確かな言葉になって出てくるのだ。

(この「求めて」が重要。話して時間をつぶすだけでは何も出てこない)

そして私は、求めている人に、問いを投げ続ける。

バイブルにしている『プロフェッショナル・ファシリテーター』という本に、こんな挿話がある。

あるラビ(ユダヤ教の聖職者)が日課として通う門の門番に、こう尋ねられた。

「どこに行こうとしている? 誰に会うつもりだ? なぜ、ここにいるのか?」

ラビはその問いに答えた後、門番に頼んだ。

「私が門を通るたびに毎回、同じ質問をしてくれ。そうしたらいまの給料の1.5倍払おう」

『プロフェッショナル・ファシリテーター』(ラリー・ドレスラー著)より引用(筆者要約)

自分自身がこのラビのようにありたいし、クライアントに対しては、この門番のような存在でありたい。

そういう依頼のされ方はないのだけれど、その心づもりで、日々、対話の現場に立っている。

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