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近年、ファシリテーターという言葉はずいぶんと人口に膾炙するようになりました。
私が「ファミリービジネス専門のファシリテーターです」と名乗ると、ビジネスシーンで出会う多くの方々に、理解はしてもらえているように感じます(具体的に何する人?という疑問符はつきますが)。
しかし、言葉が浸透することと、その意味するところが本質的に理解されている状態、というのは全く別ものですよね。
ファシリテーターは、単なる調整役ではありません。
意見のまとめ役でもなければ、白熱した議論の仲介役でもありません。
日本ファシリテーション協会の設立者で、初代会長でもある堀公俊氏の著書『ファシリテーション・ベーシックス』に、ファシリテーターとは何か、が簡潔に書かれています。私はこの説明が分かりやすくて好きなので、ちょっと長いですが引用しますね。※()内は私の補足です。
(ファシリテーターとは)一言でいえば、コンテンツではなくプロセスにリーダーシップを発揮しているのです。
私たちは、会議や研修といった人と人が関わる場に参加すると、そこで扱われている題材の”中身”に頭が占領されてしまいます。「何が答えか?」「どんな案がふさわしいか?」「何を学べばよいか?」です。
これらをコンテンツ(内容)と呼びます。具体的には、意見、アイデア、知識、経験、思いなど、料理でいえば”素材”に当たるものです。それを元に結論や学習を生み出していきます。そこに意識がいくのは当然のことです。
ところが、そうすると「どんなやり方で議論すればよいのか?」「この場で何を話し合うべきか?」「誰に話を振ればよいのか?」といった”進め方”への意識がおろそかになります。
これらをプロセス(過程)と呼びます。具体的には、進行、働きかけ、関係性、思考法、感情の扱いなどであり、料理でいえば”調理”にあたるものです。
コンテンツとプロセスは、いわば車の両輪です。どちらもないとうまくいきません。互いが掛け算となって成果が生まれます。片方がいくら良くても、もう片方がゼロなら、結果はゼロになってしまいます。
(堀公俊著「ファシリテーション・ベーシックス」第1章より抜粋)
いかがでしょうか?
私はこの説明を読んで、議論におけるコンテンツとプロセスは別ものであるという基本を知りました。そして両者を切り分けることで、ファシリテーションの現場でずいぶんと冷静になることができました。
もう少しだけ引用を続けます。※()内は私の補足です。
ところが、全員に(コンテンツとプロセスの)両方を目配りさせるのは大変です。だったら、参加者がコンテンツに専念する代わりに、1人だけコンテンツから離れ、みんなのためにプロセスを考える人を置いておけばよい。それこそがファシリテーターです。
言い方を換えると、参加者が安心してコンテンツに集中できるよう、ファシリテーターがプロセス面でリーダーシップを発揮する。ファシリテーターとは、1人ひとりを輝かせる、裏方としてのリーダーなのです。(同書籍からの引用以上)
この本によると、ファシリテーターはリーダーなのです。あくまで裏方ですが、議論のプロセスをつくる上でのリーダーだと。
リーダーならば、リーダーらしい振る舞い、人となりが求められます。
単に、人の話をよく聞く仲介者では、リーダーシップは務まりません。
もちろん、場の主役はコンテンツを考える参加者です。ファシリテーターが目立ったり、意見を押し通すことは論外。
「裏方の」リーダーとしてどうあるべきか。
私はプロのファシリテーターとして、その「あるべき姿」を追求していこうと思います。