TRUST BUILDER’S BLOG

CATEGORY

2022.04.11日-
同族企業にとっての株主とは;「支援する株主」を育てませんか?

少し前の投稿で「同族企業で有益なエグゼクティブ・ファシリテーションができる立場」として、社外取締役の存在を取り上げました。
多くの日本企業で社外取締役に招かれるのは、企業経営経験者や専門家(弁護士、公認会計士)、大学教授などです。
唐突ですが、ここにひとつ、投資家というカテゴリを入れて考えたいと思います。投資家は、社外取締役としてエグゼクティブ・ファシリテーションできる立場、という考えです。


その前にファミリービジネス、特に非上場の同族企業における投資家(株主)とIRについて述べることに挑戦してみます。
(Investor Relations:インベスター・リレーションズ 企業が株主や投資家向けに経営状態や財務状況、業績の実績・今後の見通しなどを広報するための活動)

そもそも非上場の同族企業経営者はIRを、その必要性をどのようにとらえているのでしょうか?

何代か続いた同族企業で株主、特にファミリーメンバー株主に投資家説明をしているオーナー経営者は、どれくらいいるのでしょうか?

長く続く同族企業の場合、株主も相続で受け継いだファミリーメンバーがほとんどで、株主自身にも「出資している」感覚は薄いと思われます。出資というより「既得権益」。

株主自身の「当事者」意識の薄さをいいことに、経営者側のIRの意識も低くなっているのでは?というのが私の仮説です。

 

さて、ここで参考にするのはスタートアップのIRです。

読み手に配慮した情報を積極的に提供している起業家のほうが、やはり責任感や実行力が高いことが多いです。
投資家の関心が離れないよう情報を共有し続ければ、自分たちの企業のことをより強く、好意的に相手に印象付けることができます。

しかし既存投資家との関係維持を怠っていた場合、残念ながらその苦しい時期を乗り越えるのに必要な支援を集められない結果になる可能性が高いでしょう。

 

(80社以上のスタートアップに投資をしているベンチャーキャピタル Coral Capitalのブログ「投資家との情報共有がうまいスタートアップほど成功する理由」)

同ブログに紹介されている米国VCパートナーも同様のことを述べています。

「どうやらIRのクオリティや更新頻度と、企業や起業家としての優秀さとの間には相関があるようです。
直接的な因果関係があるとは決して思いませんが、優れた起業家であれば指標を重視し、戦略的に取り組み、継続的な成長を実現しているが故に、小まめでクオリティの高い情報共有をするであろうことは十分に考えられます」
(https://blog.aaronkharris.com/investor-updates)

 

スタートアップ、起業家という言葉を「同族企業」に置き換えてみたら、どうでしょうか?
「株主との情報共有がうまい同族企業ほど成功する理由」

どうですか?しっくりきましたか?それとも違和感をもったでしょうか?

EXIT(上場や売却)によって大きなリターンを期待するVCと、相続で受け取った株をただ所有しているファミリー株主の目線が違うことは百も承知で、このブログを紹介しました。
なぜなら、会社法上は同じ「株主」。ただそれだけだからです。

一言にIRといっても、企業のステージによって意味は大きく変わってきます。しかし本質的に、経営者にとってのIRの目的は「投資家に常に情報を提供し、支援者であり続けてもらうこと」です。

 

ファミリー株主を「支援者」と捉えたとき、非上場同族企業の経営者はファミリー株主から、良い支援を引き出せているでしょうか?
そもそも自分が大株主であるオーナー経営者の場合、自分や自社に「株主からどんな支援が必要か」を客観的に把握しているでしょうか?


なんていうのかな。
同族企業経営者の多くは、「株主」に対して貧しい認識しか持ち合わせていないように感じるのです。

メディアで報道される「物言う株主」。ファミリー同士の議決権争い、配当を受け取るだけの存在。相続で揉める最大の要因は自社株式だ・・・
世知辛いネタをあげればキリがありません。
でも、それだけで「株主はめんどくさい」と蓋をしてしまってよいのでしょうか?

やり方次第、伝え方次第で、最大の支援者にもなり得るファミリーメンバー株主。
その価値を知らずして「争いを避ける」ことばかりに主眼をおく株主対策は、もうやめませんか?

 

株を分けるから面倒なことになるんだ。オーナー経営者が大半の株を持っていれば、文句も言われないし、争いごとも起こらない。スピード感のある経営ができる。


確かにそういう利点もあります。


でも、自分ひとり大株主って、さみしいです。
孤独ですよ。

経営は一人ではできない、と経営者は口をそろえて言います。社員がいて会社は成り立っているという事実に、反論する経営者はいないでしょう。

「所有」も同じです。
会社の繁栄を考えるとき、「会社の所有」は、ひとりではできません。支えてくれる株主が、必要です。
コミットしている株主は、社員とはまた違った形で、あなたの支えになってくれます。そうなるように、育てることができます。


オーナー経営者の皆さん、「支援する株主」を育てませんか?

  INDEX